top of page
  • 執筆者の写真SHADOW EGG

プロローグ

──古代オー文明



はるか昔──古代の人々は地上だけではなく大地を浮かばせ、空に浮かぶ街に住んでいた。


点々と浮かぶ小さな島と地上と空の大地を行き交う飛行船。

島と島とつなぐ薄い透明の反重力の道。

レーザーのような光で包んで浮かんで自動で物を運ぶ導力ロボット。

決して人口は多くはなかったが国という概念もなく、争いもない世界。

そんなはるか昔に存在した高度な文明が『古代オー文明』と言われている。


しかし、古代オー文明は『星の厄災』と呼ばれる未曽有の危機により滅びたと言われており、人類だけでなく動物を含む生命そのものの多くが存在を失った。

世界の崩壊の影響でその文明も無に等しいほど衰退したと言われている。


文明が滅んだ今でも『星の厄災』は教会の伝承として語り継がれるほどの伝説としてずっと語り継がれてきた。

文明は完全に滅んでも少ない人類たちは再び少しずつ世界で再興していった。

そうして長い長い年月を経て、国が生まれ、新しい歴史が生まれていった今もなお、古代オー文明の残骸や遺跡は未だ世界の各地に散らばっている。

今『彼ら』がいるゴルモン遺跡もその滅びた古代文明の遺跡である。


『彼ら』とは何者か?


常識的に考えるとするならば、古代のオー導力を発掘して一攫千金を狙う発掘隊や冒険者か、もしくは歴史を解明するために訪れた考古学者あたりだろう。

しかしそのどれでもない。今このゴルモン遺跡にいる彼らとは──


『少年兵』と『王女』である。


オドン帝国 第4独立特殊部隊所属 アルフレッド=ホークマン


仲間達からアルフと呼ばれる少年は特殊部隊に所属する軍人であり、アルフが短剣の剣先を相手に向けている。


その相手はアルメリア王国、第1王女 名はセティナ=ラ=アルメリア


王女である彼女もまたアルフにレイピアの剣先を向けている。

遺跡の空気は冷たく、コケのはえた天井から漏れた地下水脈の水滴の音が地下の部屋に響き渡る。


一国の王女と他国のエリート少年兵が剣先と敵意を向け合い、緊迫した空気を漂わせている。

なぜ冒険者でもない、盗賊でもない2人が古代文明の遺跡で刃を交えようとしているのか?

物語の主人公であるこの少年少女が今に至るまで、4日前にさかのぼる────



最新記事

すべて表示

3日前、アルメリア王国領北西部、ヴィラノ修道院にて── まだ夜も明けない時刻。 灰色のレンガでできた渡り廊下を細いブーツが一歩、また一歩と進んでいく。 『黄土色の鐘の揺れは、その鐘から広がる音の残響さえもどこか不気味に揺れているようだ』 渡り廊下を歩く少女は、本で見た言葉を脳裏で口ずさむ。 今まさに聞こえる、ヴィラノ修道院の頂点で鳴る鐘の音を聞きながら。 福音のための鐘はいつしか、時を知らせるため

先ほどまでの緩んでいた自由な沈黙とは異なり、隊員達は統率された沈黙を保っていた。 左舷に立つアルフは両手に武器をとっており、反対に右舷に立つジンは両腕を組み目を閉じている。 両者の間に位置するバッファは、しゃがみながらも揺れる船体で自身とボウガンを多角的に素早く固定させる体勢を試行錯誤しているようだ。 ステンはまっすぐと正面を見ていたがほんの数秒、下目で甲板の隊員達を見て再び正面を直視する。 波で

「はぁ……」 船首で退屈そうに手すりへともたれ掛かってるバッファは、眠そうな目で海を眺めていた。 見える景色は青い波とほんの少し霧の混じったような空。 そして聞こえる音は波の音ばかり。 センチメンタルや風情を感じる感性がなければ飽きるのも当然なのだろう。 最初こそ気分も上がり、いざという時の緊張感も心の隅に残してはいたものの、それが続くとバッファは気は緩む。 それこそが彼の良さであり、アキにいつも

bottom of page